子供を育てたことがなくても絵本は書けるか。子供と接した経験が必要か。

イラストレーターの友人が、あるとき子供の本の仕事がしたくなって、ベビー雑誌編集部へ売り込みに行きました。

ところが、

「このままでは、うちで使うのは難しい。もしあなたに子供ができたら、また見せに来てね。」と言われたとか。

子供がいないと、ベビー雑誌の仕事はできないのだろうか、と思ったそうです。

 

まだ実力が足りなかっただけとも言えるし、断るための方便にしたとも言えますが、もし絵本で同じことを言われたらどうかなぁ。

子供を育てたことがなくても絵本は書けるか

絵本は子供のもの、という考えがある一方で、最近は大人にこそ喜ばれて購入される絵本も増えてきました。

 

あることをテーマにして、何か創作しようとする場合、経験がなくても詳しく調べることで、そのテーマで作り上げることはできます。

「ベルサイユのばら」と「敦煌」

中学の頃、ベルサイユのばらがリアルタイムで、雑誌連載中でしたが、あの連載をしていた時、作者の池田理代子さんはまだ海外旅行をしたことがなかったといいます。

シュテファンツヴァイクの「マリーアントワネット」を読んで感銘を受け、それから様々な資料を調べ上げて、あの一斉を風靡した名作を書きあげたのです。

 

井上靖の「敦煌」も、西方シルクロードへの憧れから、書きあげたものですが、当時は、中国の奥地に実際に行くことができませんでした。書きあげて、数年経ってから、ようやく行くことができたそうです。

 

私の子育て期間中はどうだったか

私は子供が二人いますが、自分の子供を、絵本の参考にしたことがまだありません。自覚していないだけで、それなりに子供の成長などについてはわかっているので、意識せずとも出てきているのかもしれませんが。
でも、たくさんの子供を見てきたわけでもなく、知っているのは自分の、それもたった二人の子供だけ。

 

自分の子供のことを思い出しても、私はなんにもアイデアが出ませんでした。もちろん、中には子育てをしたからこそ、素晴らしい作品を書く方もいますが。

 

 

私自身の子育て期間中を思い返してみると、すごく大変で忙しくて、いまでいうワンオペ育児で、全く気持ちに余裕がありませんでした。初めての土地で初めての子育てだったし、毎月のように息子は熱を出して病院へ連れていく、そういう生活でした。

 

頼りになりそうな実家の母は、すごく遠くに住んでいたし、しかも当時まだ現役でフルタイムで働いていた母を頼ることはできませんでした。

息子が病気になった時など、引っ越してきたばかりでどこに診療所があるのかも知らず、パニックになって救急車を呼んだこともあります。

 

思い出すと苦しくなって、涙が出そうになります。

 

その頃は専業主婦でしたが、もし絵本の仕事をしていたらどうだったかな。

自分の子供は、近すぎてたいへんすぎて、ときにはかわいいとか、こんなおもしろいことした、とか気づくことはありましたが、それを絵本に取り入れることはできなかったと思います。

 

この絵本すごいなぁ、という絵本を書いた人の経歴を調べると、保育園で働いたとか子供会で紙芝居をしていたとか、アルバイトで児童館で幼児と接していたとか、そういう経験を持つ方は確かに多いようです。

 

でも絵本作家の目指す全ての人が、そういう経験を持てるわけではないし、子供と接する機会がないこともあります。

子供と接する機会がない場合はどうするのか

あとさき 塾に行っていた時に、言われたことは、

「自分の子供時代を思い出しなさい。」ということでした。

うん、それなら、やれる。たくさん遊んだし、たくさんおもしろいことがあった。だからおはなしが書けそうだ、と思いました。

ベルばらや敦煌、のように資料を調べるわけではないですが、自分の子供時代を思い出す。書き出してみる。

たくさんの絵本を読む、児童文学を読む。そうするうちに、自分なりの絵本の資料的なものが、たくさん蓄積して行って、一つの作品として、パッと、頭に浮かぶのではないかなぁと思っています。

 

なので、結論。

子育てしたことがなくても大丈夫。

ただ、やっぱり人生経験が、絵本を作るときにも生きてくるので、あせらないこと。

ごく当たり前と思っている会社の仕事とか毎日の暮らしとか、恋愛したり失敗したり旅行したり、そういうものをなるべくたくさん積み上げて行ったほうが、自分の中に引き出しが増えていって、創作に役立つということ。

 

*私は、モーニングページを書いているのですが、書くようになってから、子供時代の細かいところまで思い出せるようになりました。毎朝、15分か20分ほど、ノートになんでも頭に浮かんだことを書いて行くのです。

愚痴でも悩みでもなんでも。アイデアでもいいし、文章じゃなくイラストでもいい。

文字に書いて行くことが、脳のトレーニングになっているのかもしれません。

モーニングページについては、また別の記事に詳しく書きますね。知りたい方はこの本を読んでみてください。

*「ずっとやりたかったことをやりなさい」

この本は、アーティストに向けた自己啓発本です。読むとグッとくる人、多いと思います。

これまであまり順風満帆じゃなかった方は特に。

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