イラストレーターとして、書籍の挿絵の仕事をしていると、画料を一度にもらう(買取)のか、印税にするのか、どちらがいいですか、と出版社から聞かれることがあります。
(絵本作家の場合は、著者なので、単行本として出す場合は最初から印税になります。月刊絵本などでは、契約が別にあります)
買取と印税
買取、というのは、原稿をそのまま出版社が買う、という意味ではなく、
*買取とは、最初に画料として、1回だけ支払われることを言います。
*印税は、売り上げや印刷部数に応じて、増刷のたびに一定額が支払われます。
**買取の一時金で受け取る契約をしてしまうと、その後いかに版を重ねようとも、あなたに画料が支払われることはありません。
一時金として受け取る場合は、最初に支払われる印税より額が大きいので、すぐにもお金が欲しい、というときは、ふらっとなってしまいがちですけど。
今の私なら、まず印税を、とおすすめするのですが。
ただ、駆け出しの頃は、やっと憧れていたさし絵の仕事だ!と思っても、印税がたった1%くらいのことが多いです。
初版は3000部とか5000部くらいだったりするので、たとえば1000円の本だったら、20〜30点カットイラストを描いて、10万円くらい。それが、買取の場合は20万円くらいもらえることがあるので、収入の少ない時期だったら、ものすごく迷いますね。
少し実力もついて、さし絵のスペースも大きかったりすると、2%とか3%とかになって来ますが、新人に回ってくるのは、たいてい小さなカットイラストです。印税のパーセンテージを増やしてもらうのは難しいと思います。
わたしも、画料を一時金で受け取ってしまって、その後版を重ねているものが、ひとつだけあります。しまったな〜というのが正直な気持ち。
当時、誰かアドバイスをくれる人がいたらな〜、とも思います。
ターシャチューダーの秘密の花園
アメリカの著名な絵本作家、ターシャチューダーのエピソードにこんなのがあります。
あるとき、バーネットの「秘密の花園」の装画とさし絵を描きました。当時、ターシャは離婚して4人の子供を育てており、しかもお金のかかる私立の名門に通わせていたそうです。
とにかくすぐにお金がほしかったので、原稿買取、を選んだそうです。確かにその時はお金がもらえますが、その後どんなに版を重ねても、画料が払われることがありません。一時受け取りということで契約してしまっているからです。
ターシャチューダーの「秘密の花園」の表紙は、とても素敵で、一目見てパッと心惹かれるイラストです。この本は売れに売れて330万部以上を売り上げましたが、画料を、原稿買取で受け取ってしまっているので、彼女にはその後、全くお金ははいりませんでした。
このエピソードを載せた本の著者は、「心ない編集者のためにターシャは大きな不利益を被った」という意味のことを言っています。「秘密の花園」のような売れ行きが見込める作品ならば、印税をすすめてしかるべきというところでしょう。
ターシャチューダーの秘密の花園はこんな表紙。
印税か、買取か、きかれたら。
もし今後、書籍のさし絵で、一時買取か、印税か聞かれたら。
考えるべきポイント
*印税のパーセンテージをきく。新人の頃は、挿し絵の量にもよるけれど、1%のことが多い。
*その著作は長く売れそうかどうか。(名作だったり、著名作家だったり、とか)
*いますぐお金が必要かどうか
イラストレーターとして仕事する場合、結構悩むところであり、カケみたいな部分もあります。
実はわたしも、買取にしてもらって本当に良かった、と思ったことがあります。
こればかりはなんとも言えないのも事実。実績を積んで印税の割合をあげてもらえるようになってくると迷いが減りますね。
木村隆芳と言います。 僕は絵本作家を目指して絵本を書いているのですが 朝比奈様の…
メッセージありがとうございます。もう本当に神経がすり減りますよね。 ターシャさん…
模写といってもむずかしく考えず、初めは人物をどこに配置しているか、大きいか小さい…
コメントありがとうございます。 大好きな方がフォローしてくださったんですね。あま…
はじめまして。「ターシャテューダー ねずみ」と検索していたら、あなたのブログに辿…