もうずっと前の話。
なんか気が弱くて自信がなかった初期の頃の話です。
この経験を通してわかったのは、自分がこんなのを描きたい、と思ったら、あんまり人の意見ばかり気にする必要がないと言うこと。
自分をしっかり持っている人には、当然、当たり前のことと思いますが、私にはむずかしかった。。。
通信で、一通りイラストのコースを卒業して、そこの講師の方から、初めてのイラスト仕事を紹介されたりして、これからちょっとずつがんばろう、と思っていた頃の話です。
20代の頃から、絵本やりたいなぁと、とずっと思っていて、ある日、トレーシングペーパーというものを知って、これを絵本に使ったら面白いものができそう、とワクワクしていました。
ところがある日、ブルーノ.ムナリの「きりのなかのサーカス」を見つけてしまった。
ああ、やられたあ、悔しい、という気持ちが少し。
なんか、私も新しいおもしろいことがやりたいと思っていたそんな頃。
それから長谷川集平さんの
「絵本作りトレーニング」という本を読んだけど、いまいちよくわからなくて。絵本て、なんかむずかしそう、と思ったり。
絵本を教える場所というのが、以前はあんまりありませんでした。
多分東京へ行けばあったんでしょうけど。地方在住、小さい子供がいて時間も取れない、という状況ではなかなかうまくいかないです。
そんなとき、通信(イラストコースは終了していたけど)の講師の先生が、絵本をみてくれるっていうんです。
うれしくて、東京まで出かけて、何度かみてもらいました。
その頃の私は、とにかくドレスが大好き。お姫様の出てくるお話が描きたくてしかたなかったので、そういう絵本を書いては持って行きました。
そしたら、
「うーん、もっとなんかこう、日常的な、普通の生活のなかからアイデアを出してこれないかな。
絵描きだったら、普通の人とは違った視点があるはずだから、おもしろいものができるはずだけどね」
はい、いまなら、すごーくわかります。
全く正しいです。
おもしろいことも、ふしぎなことも、足元に転がっているんです。気がつかないだけなんだって。
しかも、お金を払うことなく、タダで無料で見てもらってたんですからね。本当にありがたい言葉だったと思います。
でも、その頃の私は、とにかく、中世の美術が大好きだったこともあって、お姫様がかきたくて仕方なかったんです。
それで、
「でもわたし、おひめさまのお話が書きたいんです。」と言ったところ、、
「何言ってる、絵本というのは、そういうもんじゃない!」とちょっときつめの口調で返されました。
わたし、その時点で絵本をあきらめました。好きなものが描けないなんてつまんない。
向いてないんだな。
その後、遠いけれど、東京のイラスト教室(福井真一さん、いまは Fスクールを主催されています)へがんばって通うことにして、イラストだけでやっていこう、と方向転換したのです。
それなりに腕を磨き、ぼちぼちとイラストの仕事は増え、描き続けました。
もちろんおもしろかったんですが、やっぱり絵本がやってみたかった。
土井さん、小野さん お二人が主催する絵本ワークショップ、あとさき塾に通い始めるのは、それから8年くらい経ってからです。
時間もったいなかったなぁ。もっと早く始めればよかった。
そしてそして、つい昨年のこと、絵本作家のKさんとおしゃべりしていたとき、このエピソードを話しました。
お姫様の絵が描きたいといって、怒られたって。
そうしたら、
「その絵本の先生、っていっぱい絵本書いてる人?それとも、その先生のところで勉強したっていう絵本作家さんてたくさんいる?」
うーん、そうか考えてなかった。絵本へのアドバイスがもらえるっていうことでうれしくて何度か見てもらったけど、Kさんのいうようなそういう方ではありませんでした。
Kさんは
「あんまり人の言うこと気にしなくていいよ。描きたいものを描くのが一番いい。」と言ってくれました。
あのとき、だれかに同じことを言ってもらっていたら。
もっと早くに絵本の世界に入って行けたのかもしれません。
ちょっと残念な気持ちもあります。でも、ちゃんとなれたんだから、これでよかったかな。
気が弱くて、人から強く言われると、もうどうしていいかわからなくなることがあります。
イラストレーターを始めたばかりの頃にもそういうことがあって、そのときは
「日本に住んでるんだから、もっと日本的なものをかきなさい。」と言われて。
3ヶ月くらい何も描けなくなってしまいました。
思い出すと、なんだかせつない。
始めた時点で年取ってるんだから、悩んでたあの時間がもったいなかった。
いまも気の弱さはどうすることもできないまま。
いい絵本をみたりすると、一気に自信がなくなったりとか。
なので、他の人の作品を見るのは大事だけど、あんまり見すぎるのも良くないな、って思います。
うん、
お姫様のお話は、まだ実際の絵本にはしていないけれど、たぶんそのうち描くでしょう。
きいてくれて、ありがとうです。
またね。
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