カットイラスト380点も描いて、1円も原稿料がもらえなかった話。

これは、タイトル通り。カットイラスト380点を描いたけど、出版されなくて、原稿料ゼロ。

他の仕事を断って、3ヶ月近くも頑張ったのに、原稿も返って来なかった話です。

駆け出しだった頃に経験した、イタい原稿料未払い。原稿も戻って来ない

もう昔の、まだ駆け出しだった頃で、こういうことに対してどう対処すればいいのかわかりませんでした。
無知だった自分がいけないんだと、もやもやした気持ちに蓋をしてきました。

いまほどインターネットが発達していなかったし、いろいろ関係者の事情を考えると、何も言えない面もありました。
でも関係者の事情、ってあるだろうけど、こちらはちゃんと仕事してるんだから、画料が全く払われないなんて、すこくおかしいことです。

 

これからの若い人にためにも、こういうこともあるということ。
そして、最近は、相談に乗ってくれる機関や、法律関係の専門家を紹介してくれる場所も出てきました。

自戒も込めて書いておきます。

理不尽なことがあっても、どうか泣き寝入りなんて、絶対しないでください。

 

カットイラスト380点を頼まれて

もう20年くらい前になりますが、わたしはまだイラストレーターの活動を始めてまもない頃。

あるとき、以前通っていたイラスト教室の先生から、

“大きなカット図鑑を出す話がある、2000点くらいのカットを集めたもので、売れると思う、イラストレーターは6人、手分けして描く作業で、あなたにも参加してほしい、
監修は私がやります、印税は、1%だけど、再販されれば、その都度印税が入ります”
ということでした。

カット図鑑とは

カット図鑑について説明しておくと、最近はネットで自由に使える無料イラストがありますが、そのアナログ版といっていいでしょう。

まだインターネットがさほどじゃなかった時代、年賀状とかクリスマスカードとかに、著者や出版社の許可がなくても自由に使える、イラストカット図案集は、学校の印刷物とか、町内の配布物、個人の利用なんかに結構需要があって、当時はそれなりに売れたと思います。

描くのにかかった期間は3ヶ月。他の仕事を断ってまで引き受けたのに

ざっとラフを描いて提出して、その2/3が修正が必要になり、要領も悪いので、3ヶ月近くかかってようやく完成しました。

6人のイラストレーターで分担して描くので、一人当たり380点くらい。

ところがいつまでたっても、出版社から何の連絡もありません。

監修の先生も何も言ってこないし、どうなっているんだろう??

数ヶ月経って、思い切って、先生に電話しました。

電話に出てきたのは、奥様で、
「今、主人は旅行に出ていて。ちょっと連絡つかないんですよ。」
「仕事のことで、ご相談したかったんですが、いつ頃お戻りですか。」
「さあ、ちょっとわかりませんね。」

出版社から、なんの連絡もなかった

もうしばらく待ってみようかと、電話を切りました。が、ふと思いつき、6人のイラストレータの中に知り合いの人がいたので、電話して聞いてみました。

「本の出版のことで、なにか聞いてる?」

「ううん、、なにも。わたしも、どうなってるんだろうと思っていたんですよ。他の仕事を断ってやってたのにね。」

 

先生には連絡が取れないまま、お正月になり、その出版社から年賀状がきました。

年賀状には

「平にご容赦を。」と一言だけ。

何ひとつ説明がありません。

 

先生からも連絡がないし、出版不況で、本が出せなくなったようだと、風の噂で聞きました。

あとでわかったのですが、先生は、病気で入院していて。

ですが、しばらくして、先生がその出版社の社長と飲み交わしている写真を見ました。

元気じゃん、どうなってるの????

原稿料はどうなったの?原稿はどこへ行ったの?

 

 

2年くらい経って、先生は亡くなりました。出版界全体、本の売り上げも、ネットに押されてずいぶん減りました。

お世話になったイラスト教室の先生だからっていうので、やっぱり強く言うことができなかったです。病気と聞いて、なおさら。私以外の5人のイラストレーターも同じだったと思います。

 

 

日本では、本を出版するとき、契約書を交わすのは、本が出版されてからです。

不測の事態になったとき(災害とか、事故とか、倒産とか)に、作家に対して原稿料の支払いが行われるのかどうか、たぶんこれまでは何もなされなかったんじゃないでしょうか。

今回のように、詳しい事情はわからないけれど、何かあって、出版されなかった時も、何も保証がないようです。

おそらく、訴えられた場合は、少額訴訟、などで対応しているのだと思います。

ではどうすればいいのか

このあたり、わたしもまだ不勉強です。ひとつひとつ、事情が違うので、対応も変わってくると思います。

私も以前加入していた「イラストレーターズ通信」という団体があります。

主催の森流一郎さんは、イラストレーターとして活躍していましたが、この仕事に専念するために、イラストレーターとしての活動をやめました。
こんなのを作ってくれて本当にありがたいです。

なにかあったときに相談に乗ってくれます。入っておくだけでも、安心感が違います。

それからフリーイラストレーターの高田ゲンキさんも、有益な情報をたくさん発信してくれています。(著作もおもしろいです。)

*イラストレーターズ通信*イラストレーターズ通信

*高田ゲンキさんのツイッター高田ゲンキさんのtwitter

 

最近は、こんなことがあった場合、Twitterでつぶやいたら、すぐ炎上するのかも。

クライアント側も、そんなことは避けたいでしょうから、なにかトラブルがあったら、いきなりSNSじゃなくそれなりに手順を踏んで、訴えましょう。

こちらの不利にならないように対策したいですね。

 

 

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